情報倫理とは何か 第一章 情報倫理の成立背景と課題 第一節 情報倫理の成立背景 コンピュータやインターネットが普及したことにより、コンピュータやインターネットを使ったトラブルが頻発するようになってきました。右の図はサイバー犯罪の増加を示したグラフです。これらのトラブルを解決するために有効だと思われる三つの方法論が考えられています。 1. 教育によってコンピュータやインターネットの操作方法を学ばせる方法、 2. 法制度を整備し法規範によって使いかたを規定する方法 3. 倫理によってコンピュータやインターネットの正しい利用方法を定める方法 第二節 情報倫理の課題 ここでは第三の方法である倫理について、それも情報倫理と呼ばれる分野について考察を行いたいと思います。 『情報倫理の構築』の第一章「コンピュータ・エシックス? インターネット・エシックス?」では情報倫理を下記のように捉えています。 「情報倫理の課題は、現代社会の情報化や電子化が提起している倫理的問題を明確に文節化し、そこで提起された問題への解答のための枠組みを作り、それらの問題への解決を述べることである。どのような問題が倫理的問題であるかということは、事前にはわからないので、そもそもそのような問題が存在すること、すなわち、いくつかの特定の問題が倫理的問題であることを確認することもまた重要な仕事である。 どのような時代のどうのような社会でも解決すべき倫理的問題は存在する。解決すべき倫理的問題とは、その時代、その社会において、何をすることがよいことであるか、何をなすべきかであるか、何をすることが許されるのかなどの一連の問題である。これらの問題に対して一定の原則を示すことによって一連の解決をあたえることが倫理学的考察の役割である。現代における先進国社会における重要な変化がいわゆる電子化、いわゆる情報化ということであるならば、そのような変化に応じて、何をなすべきか、何をなすことが許されるべきであるのか、そして、何がよいことであるのかということを検討することが、現代的な課題としての情報倫理の内容である。」(水谷雅彦、越智貢、土屋俊編著『情報倫理の構築』、新世社、2003、p.2) このことから情報倫理とは「X」を行うことであるように思われます。 第二章 情報倫理の対象領域 前章で明らかになったように情報倫理の定義は「X」です。この定義から見直してみると情報倫理があつかう対象がコンピュータやインターネットなど電子社会のみに限らないということがわかります。 TCP/IPという通信プロトコルを使用し全世界のネットワークを相互接続しているコンピュータネットワークのことであり、いまや世界規模の情報通信のインフラとなっている。 オークション詐欺やワンクリック詐欺などが容易に行われるようになっている。